カルタグラ〜ツキ狂イノ病〜
ブランド名 Innocent Grey ジャンル AVG
発売日 2005.04.28 定価 \8,800
パッケージ 紙製パッケージ(265x190x40mm) マニュアル B6ブックタイプ
DISC容量 1.76GB(DVD-ROM)
原画 杉菜水姫 シナリオ 飯田和彦
音楽 23曲、Little Wing
MANYO(Little Wing)
あり(1曲、OP)、
霜月はるか(Maple Leaf)真理絵
音声 あり、秋城柚月、雅姫乃、一色ヒカル、緋倉怜、奥田香織、森井花音、井村屋ほのか、
吉沢悠亜、北都南、サトウユキ、嶋和成、機知通、ZEN、原田友貴
インタフェース ややキーボード操作可 描画 Window・フルスクリーン両対応、
800x600
セーブ箇所 59箇所+クイックセーブ1箇所 CG枚数 323枚
おまけ CGギャラリー、シーンギャラリー、ミュージックギャラリー
対象属性 ミステリー、推理物、猟奇物、黒髪、ストレートロング、リボン、和服、着物、ストッキング、
ボブカット、眼鏡っ娘、オーバーニーソックス、ボクっ娘、ショートカット、銀髪、巫女装束、
ポニーテール、金髪、ヘアバンド、お嬢様、シスター
1プレイ時間 4〜8時間 お奨め度 8

レビュー
概要
主人公は、かつて警視庁に勤めていた時の上司からの依頼で、逗子の上月家に
話を聞きに行った。そこで、5年前に失踪した娘の捜索を依頼される。それは、
かつて主人公が付き合っていた娘・由良だった。しかし、依頼主である由良の
父親は、由良は既に死んでいると言う。主人公は、由良の妹・和菜とともに、
上野で由良の消息を探る。その頃上野では、連続猟奇殺人事件が発生していた。
果たして主人公は、無事に由良の消息を掴むことが出来るのか。由良の父親の
言葉の真意とは……という、ミステリーアドベンチャー。
キャラクター・CG・音声・音楽
キャラクターは以下の通り。

上月和菜(こうづきかずな)。(CV:秋城柚月)
行方不明となっている由良の妹で、依頼主。舞台女優として活躍している。
明るく元気いっぱいの女の子。人の話を聞かない、妄想暴走突撃娘。
天ぷらで釣られる安い女(笑)
# 「わたし、天ぷらなんて一年と六ヶ月ぶりで!」……覚えてるんだ……(^^;

凛(りん)。(CV:吉沢悠亜)
主人公が居候している遊郭・雪白で働く女性。あっけらかんとした女性。
主人公に好意を寄せており、ことある毎に誘惑してくる。
# 「秋さんを、愛しているから☆」「本音は?」「うあ〜、だりー。こんな日は、
# 若い男の精でも吸うに限るよな」……アンタ素直すぎ(笑)

初音(はつね)。(CV:雅姫乃)
雪白で働く女の子。主人公を兄のように慕っている。落ち着いた大人しい娘。

乙羽(おとは)。(CV:北都南)
雪白で働く女性。凛と仲が良い。仕事には厳しく、初音には辛く当たる。

高城七七(たかしろなな)。(CV:一色ヒカル)
主人公の妹。理屈っぽく、蘊蓄家。人の話を聞かず、自分の価値観を押し
付けてくる。勘が鋭く、好奇心旺盛。猟奇殺人事件に首を突っ込む。

小雪(こゆき)。(CV:北都南)
雪白で働く女の子。乙羽の妹分。宗教にはまり、仕事は休みがち。

芹(せり)。(CV:サトウユキ)
雪白で働く女の子。乙羽の妹分。宗教にはまり、仕事は休みがち。
……小雪と紹介が同じですが、気にしないでください(^^; セットなので……。

蒼木冬史(あおきとうじ)。(CV:森井花音)
白髪隻腕の女性で、裏組織「死の腕」の大幹部。主人公とは以前から仕事で
付き合いがあり、心を許せる友人として親しくしている。味噌好き(笑)
# 最初、男性かと思ってました……(^^;

雨雀(うじゃく)。(CV:奥田香織)
雪白の女主人であると同時に、凄腕の情報屋。昔、仕事で付き合いのあった
主人公に宿を提供し、色々と便宜を図ってくれる。
情に厚く、義理堅く、色気たっぷりの女性。

祠草時子(しぐさときこ)。(CV:緋倉怜)
宗教団体・千里教の幹部。無口で物静か、不思議な雰囲気の女性。

綾崎楼子(あやさきたかこ)。(CV:井村屋ほのか)
昔、主人公が仕事で出会ったお嬢様。世間ズレしたおっとりのほほんな女の子。

深水薫(ふかみずかおる)。(CV:サトウユキ)
七七や楼子の通う学園に勤めるシスター。

絵の方はとても雰囲気のある、魅力的な絵柄。可愛らしさと色っぽさを併せ持つ
感じで、表情も活き活きとしていてとてもいいですね。
CGは非常に綺麗だと思います。丁寧に処理されており、見ていてうっとりします。
ただ、全体的に落ち着いた色合いで、ちょっとキャラが背景と同化してしまって
見づらく感じることもありました。黒髪のキャラが暗い背景にいると、まさに闇夜の
烏状態に……。
立ち絵はポーズ変化・表情変化共にあり。会話に合わせてコロコロと変わり、
コミカルな表情もあったりして見ていてとても楽しく、感情移入もし易いです。
演出も非常に巧みで、きょときょとする瞳の動きなんかも再現されているので、
とても上手く雰囲気が出ていると思います。
壁越しの凛との会話の、コミカルなSDキャラなんかは滅茶苦茶可愛かったです。

キャラクターは個性豊かな面々揃い。中でも群を抜いて個性的なのは、妹の
七七でしょうか。お前はいったい何者なんだと(^^;
和菜はとっても健気でいい娘ですし、初音は一途で可愛らしいですし、他にも
魅力的なキャラクターがいっぱいです。
そんな中でも凛がぶっちぎりLOVE。明るくてさっぱしていてとっても可愛らしい
です。すっごくお気に入りです。お気に入りなんです……(T_T)

音声は、キャラクターとのマッチングはばっちりで、演技の方も文句なし。
和菜の暴走気味なぐらい元気一杯のところとか、雪白の人たちの落ち着いた
雰囲気や色気なんかもばっちり表現されていて、ゲームの世界に入り込めると
思います。ぶらぼー。

音楽は、落ち着いた雰囲気の静かな曲が多め。あまり派手さはないですが、
作品の雰囲気を上手く醸し出していると思います。

ゲームを開始すると、短いプロローグの後にオープニングアニメーションが
流れます。……プロローグ、かなりきっついんですが(^^;
歌はとても雰囲気のある曲で、澄んだボーカルがとても心地良いです。
絵の方はキャラクター紹介・シーン紹介的なものですが、とても絵が綺麗で
見応えはありました。
システム
インタフェースはややキーボード操作可。メッセージ送りや選択肢決定はキー
ボードで可能ですが、一部メニューの操作やクイックセーブなどは、キーボード
ではできないようです。
既読スキップ、強制スキップ、バックログ、オートモード搭載。
バックログはマウスのホイール機能に対応しており、音声の再生も可能です。
通常のメッセージ送りもホイールで可能です。

描画はWindow・フルスクリーン両対応。画面サイズは800x600です。
動作はやや重め。演出を重視しているからか、かなりマシンパワーを持って
行くみたいですね。
画面切替効果をONにしていると、画面の切り替えで結構待たされるのですが、
これをOFFにするとアイキャッチ(?)が一周で過ぎていったりしますので、ONに
しておいた方がいいのかなーと思えるので、ちょっと悩ましいです。
スキップ動作は比較的高速ですが、描画エフェクトをOFFにしておかないと
描画でかなり待たされます。

セーブ箇所は59箇所+クイックセーブ1箇所。セーブ/ロードは随時可能です。
セーブデータはセーブ日時の他、シーンタイトル(ゲーム内日付)とシーン画像、
自由記述のコメントが保存されます。
数としては、そこそこ選択肢があってエンディングも結構多いのですが、それ程
複雑な作りではないため、まあなんとか足りるでしょう。

システムはオーソドックスな選択肢決定型のアドベンチャー。
条件を満たすとTRUE ENDへの選択肢が現れる、選択肢追加型のシステムに
なっています。

ディスクレス起動可。バックグラウンドでの動作も可能です。ただし、バック
グラウンドで動かしているときは、音声は消えるようです。
主人公の名前は「高城秋五(たかしろしゅうご)」固定です。
シナリオ・プレイ感
ゲームは、主人公が由良捜索の依頼を受け、和菜と共に上野に戻ってくるところ
から始まります。その頃、上野では連続猟奇殺人事件が起きており、捜査をして
いるうちに、いつしか主人公の周りでも猟奇殺人事件が起こり……という感じ。

ストーリーは終始独特の雰囲気で進みます。舞台は終戦直後で、連続猟奇
殺人事件が起こっているうえ、主人公のいる場所が遊郭ということで、根底には
シリアスで重苦しい雰囲気が流れており、緊迫感に溢れています。
ただ、コミカルな部分も各所にちりばめられており、特に和菜が出てくると大抵
ギャグになるという状態で、ただ鬱々としているだけではないため、プレイは
しやすいかと思います。

後半になると様々な事件が絡み合い、怒濤のように押し寄せてくる緊迫した
展開になり、最後まで息をつけないような状態。

ラストは手放しでハッピーエンドとは言えないものの、綺麗にまとめられており
すっきり終わります。
ただ、TRUE END以外は、依頼や事件をほったらかしにしたまま終わったり、
一応解決はしてもどこかすっきりしなかったり、矛盾が残ったままだったりする
ので、プレイするときは必ずTRUE ENDまでやるべきでしょう。
あと、え? こんなキャラとのエンディングがあるの? と思うようなエンディングが
あったりして、なかなか気を抜けない作りになっています。

特筆すべきは、ストーリーの構成と演出。次々と起こる事件や、謎が謎を呼ぶ
展開は見ていてドキドキし、ストーリーに引き込むだけの力があると思います。
TRUE ENDへは某エンディングを見れば入れるようなのですが、そのシナリオの
ラストが見事すぎ。否が応でもTRUE ENDを見なくては気が済まなくなるような、
すごい演出がなされていて脱帽。
さらに、TRUE END以外のエンディングではどうしても矛盾点があるように思える
のですが、そういう矛盾点がTRUE ENDでほとんどすっきりと解決されるのは、
プレイしていてとても気持ちよかったです。

ただ、ミステリー物の常として、1回クリアしてしまうと謎が解ってしまうためその後は
作業になってしまうことが往々にしてあるわけですが、この作品ではTRUE END
以外では全ての真相は明かされないため、それほど作業にならずにすんでいる
と思います。
とは言っても、クリア順制御はほとんどされていないので、条件さえ満たせば
TRUE ENDは見られますし、TRUEN ENDでなくても、真相のほとんどが解る
ようなシナリオもありますから、どうしても作業になってしまうのは仕方のない
ところでしょうか。
ちなみに私は、3番目にTRUE ENDを見てしまったので、その後はちょっと
作業になってしまいました。それでも充分楽しめましたけどね。
TRUE ENDルートでは起こった事件が、あるルートでは起こらなかったりとか。

難点としては、猟奇殺人を扱っているため、かなりエグいシーンが用意されて
いること。目玉を抉り出すような絵も用意されていて、耐性がない人にはやや
辛いかも。さらに、身近な人が犠牲になったりと、精神的にもかなりキツい
シーンがあるので、プレイしていてちょっとヘコむかも。ええ、私はかなり泣き
そうになりました……。

H度はやや高め。回数はヒロインによってまちまちで、1回だけのキャラクターも
いれば、3回あるキャラクターもいます。尺の方はそこそこ確保されており、
描写の方はかなり濃厚。基本的に純愛系のシーンがほとんどですが、2回戦が
用意されていたりと、かなり頑張っていると思います。
また、Hシーンの導入も自然で、ストーリーの一部として組み込まれている感じで、
非常に好感が持てました。

テキストは若干誤字・脱字は見受けられますが、そんなに気にするほどでは
ないかと思います。また、行頭に『、』『。』『」』が来ていることもたまにありますが、
これもさほど気にはならないかと。
ただ、どちらも後半になればなるほど目立つのはちょっと気になりますね。
盛り上がっているところでこういうのが出てくると、さすがにちょっと萎えるかも。
あと、難しい、普段使わないような漢字がルビなしで出てきたりしますので、
読みやすさとしてはやや疑問です。まあ、雰囲気は出ているんですが。
あと、若干テキストとCGのズレもありましたが、そんなに気にはならないかと。
# 「すまない、顔にかかってしまった」……めっちゃ背中に出てますが?(^^;
プレイ時間・難易度
ゲームは2月6日から始まります。
ゲーム期間はシナリオによってかなり差があり、2〜5週間。
前半は1日ずつプレイしていきますが、後半はかなり日が飛んだりしますので、
あまり気にする必要はないかと思います。

ワンプレイは4〜8時間。これもシナリオによってかなり差があります。
引き込むような力のあるシナリオで、プレイしているときは全然時間を感じません
でした。

難易度は並。基本的に狙ったキャラクター寄りの選択をし続けていればOKなの
ですが、ふとした選択肢1つで別のシナリオに入ったりすることがありますし、
まさか攻略対象と思っていなかったキャラのエンディングがあるなど、コンプ
リートするにはやや手間取るかもです。また、TRUE ENDの条件もやや解り辛く、
何度か繰り返す必要があるかも。
総評
お奨め度ですが、ミステリー物が好きな人にお奨め。謎が謎を呼ぶ展開と、
各所に張り巡らされた伏線はぐいぐいと引き込むような力を持っていると思い
ますし、TRUE ENDで全ての謎が明らかになっていく様は非常に爽快で、
クリアしたあとはかなり達成感があると思います。
描写も非常に丁寧で、演出も凝っており、メリハリもあって、非常に良くできた
ストーリーだと思います。

ただ、各エンディングのラストはやや駆け足であっけない印象があり、TRUE END
以外は謎も残ったままであまりすっきりしないので、ちょっと物足りなさがあり、
もやもやした気持ちになるかと思います。まあ、そのおかげで、早く真相を知り
たいと思うようになるわけですが。

また、重苦しいシーンの直後にコミカルな展開が入ることがあり、もう少し
余韻に浸らせて欲しかったなーと思うこともありました。
まあ、このあたりは個人の好みもかなり出てくるところかと思いますが。

そしてなんと言ってもキツいシーンの存在。猟奇殺人の現場を描くシーンは
かなり強烈で、耐性のない人にはかなり厳しいと思います。

あと、真相の解明が主人公不在のうちに行われることがあり、ちょっと置いてけ
ぼりをくったように感じることがあったのは残念。ある程度は仕方ないかとは
思いますけど、一番重大な部分がほとんど人の口から語られるというのは、
推理物としてはちょっと物足りなさも感じました。
そして、TRUE ENDで全ての謎を解明するため、やや詰め込みすぎで駆け足な
印象があり、じっくり読まないと理解しづらいこともありました。
実際、TRUE ENDのルートは2回読み直して、初めてしっかり理解できましたし。

しかし、これらの点を差し引いても、よく練られた非常に面白いストーリーで、
CGも音声も音楽も全てに於いてとても高いクオリティの、レベルの高い作品だと
思います。凝った演出や丁寧な描写、緻密な設定は目を見張りますし、各所に
力の入れようが見受けられる作品でした。

お奨め度は 8 としていますが、これはかなり厳しい評価かもです。
ちょっと後半に色々と詰め込みすぎて駆け足になり、理解しづらい点があったり、
TRUE END以外のエンディングはもやもやした終わり方だったり、主人公の知ら
ないところで話が解決していたりというのはあるものの、作品のクオリティとしては
ほとんど文句なしですし、ストーリーも非常に面白く、最後まで楽しんでプレイ
できました。
唯一、エグい描写があるため、ちょっと人を選ぶだろうということで、採点は
低めにしていますけど、そういった描写が平気な人なら、文句なくお奨め出来る
かと思います。まあ、評価を厳しくした理由はもう1つあるんですが、それは
ネタバレになっちゃうので最後に回します。
もう少しラストをじっくり丁寧に描いて、印象に残る終わり方をしてくれれば、
そういう点を差し引いても、文句なくお奨め度 9 を付けたかもですけど。
一番印象に残っているシーンが、猟奇殺人のエグいシーンというのは何とも(^^;

ともあれ、非常にクオリティの高い、パワーのある作品で、まさに力作・意欲作
と言うに相応しい、やる気に満ちた素晴らしい作品だと思います。
購入しようかどうか迷っている人は是非どうぞ。

最後に。鉈で肩口をざっくりやられて、3日で退院してしばらくしてすぐHですか?
主人公、タフすぎですヨ(^^;


以下、激しくネタバレのため、これからプレイしようと思っている人は絶対に
読まないように(^^;


私が高い評価を出来なかった理由、それは七七の存在です。
あらゆる意味で七七というキャラクターはすごすぎて、感情移入が出来ません
でした。殺人犯の正体を突き止めたり、和菜を守ったり、事件の真相を解明
したり、はっきり言って、こいつがいたら主人公いらないじゃん、と。
そして、一番気になったのは凛の事件の時。あの時、七七は犯人と接触して
いたわけですが、その時に何らかのアクションを起こしていれば、もしかしたら
凛は助かったかも知れないと思うと、悔しくて悔しくて。
もちろん、タイミング的には間に合わなかったかも知れませんが、どうしても
納得できなかったんですよね。だって、凛が一番のお気に入りでしたから(T_T)
凛の事件は、ホントキツかったです……。まあ、それだけ私が感情移入して
いたということなんですけど。

あと、薫エンドがあったのはびっくり。犯罪者とのエンドかよ、と(笑)



ロビーに戻る  レビュートップに戻る