桜華-おうか-
ブランド名 Carriere ジャンル ビジュアライズAVG
発売日 2005.06.24 定価 \8,800
パッケージ 紙製パッケージ(163x230x39mm) マニュアル A4用紙2つ折り
DISC容量 2.25GB(DVD-ROM)
原画 ここのか、麺帝マブ シナリオ そら、JUN、康盛禅
音楽 32曲、石川直人細井聡司 あり(2曲、OP・ED)、みとせのりこ中原涼
音声 主要キャラのみフルボイス、夏野こおり、文月かな、芹園みや、榊るな、桐島やよい、
楠鈴音、佐々留美子、馬並硬太、AYA
インタフェース ややキーボード操作可 描画 Window・フルスクリーン両対応、
800x600
セーブ箇所 64箇所+クイックセーブ3箇所
+オートセーブ1箇所
CG枚数 135枚
おまけ 思い出、音楽
対象属性 純愛、感動、コメディ、アクション、戦闘、黒髪、ウェディングドレス、赤髪、看護婦、
ナース服、眼鏡っ娘、義妹、ドジっ子、紫髪、ツインテール、リボン、お兄ちゃん、
巫女装束、尻尾、金髪、ストレートロング、メイド服、ご主人様、銀髪、ボブカット、
獣耳、緑髪、ショートカット、先輩、後輩、ゴスロリ、くノ一、忍者、猫耳、首輪
1プレイ時間 8〜10時間 お奨め度 9

レビュー
概要
強い願いを奇跡に変える力を持った不思議な桜「霊木」に守られた街、夢源郷。
その桜によって不思議な力を得た者達は「共神者」と呼ばれ、それを管理する
「守人」と呼ばれる人達が存在していた。共神者の使う奇跡には「代償」が必要
とされ、それによって共神者は様々なものを失っていた。そんな守人の1人である
主人公は、自信も心に痛みを抱えつつ、心に痛みを持つ共神者達と触れ合って
いく。果たして、霊木が導く先には何があるのか……という、ビジュアライズAVG。

この作品は、2002年6月に発売された「心輝桜」(以下、前作)をベースとして、
音声の追加、キャラクターの追加、シナリオの大幅追加がなされた、リメイク作品
です。なお、本作品にはオリジナルの「心輝桜」も同梱されています。
キャラクター・CG・音声・音楽
キャラクターは以下の通り。

鈴森静名(すずもりしずな)。(CV:桐島やよい)
両親を亡くした主人公と唯を引き取り、主人公の中に眠る神刀「禍風」の
半分を自分の中に封印した。
可愛いものが大好きで、傍若無人が服を着て歩いている、守人の中で最凶と
言われる女性。怒ると全身から黒いオーラが吹き出し、容赦なくお仕置きを
行う。記憶を消す共神「虚幸」を使う。

風崎夏輝(かぜさきなつき)。(CV:芹園みや)
主人公の幼なじみで親友。病院の看護師にして、最強のお節介焼き。
傷を治す代償として、治した傷と同等の不幸を呼び寄せてしまう共神「癒慰」を
使う主人公を、不幸から守る役を担っている。神刀「穿焔」を使い、予知能力を
操る。明るくさっぱりした女の子。

鈴森聖奈(すずもりせいな)。(CV:佐々留美子)
静名の義妹で、守人の長。人見知りしなくて、天真爛漫。
普段は夏輝の実家の旅館で働いている。霊木の奇跡を引き出すことが出来る
力を持つ。長として振る舞うときは厳かで凛々しいが、本当はお茶目さん。

古坂唯(ふるさかゆい)。(CV:楠鈴音)
主人公の義妹。ドジっ子。両親を亡くした事故の時に瀕死の重傷を負ったが、
主人公の共神「癒慰」と、禍風の力で助かった。その代償として重荷を背負った
主人公に対し、償いをしようとしていたが、ある日突然行方不明になる。

古坂あや(ふるさかあや)。(CV:榊るな)
唯を探す主人公が唯に逢いたいと願った時、主人公の前に現れた女の子。
動物と心を通わせる共神「心奏」と、怪力の共神「神腕」の2つの共神を持つ。
「神腕」は代償としてエネルギーを消費するため、大食らい。
明るく素直で、主人公のことを「お兄ちゃん」と呼び慕う。

ソルネ。(CV:夏野こおり)
物神博物館の館長。人形の物神。主人を失ってからも、主人が残した博物館と
そこに住む物神と共に暮らしている。
亡くなった主人と主人公がうり二つのため、主人公を「ご主人様」と慕う。
おっとりのほほんマイペースな女性。

紗雪(さゆき)。(CV:文月かな)
異世界の番人である霊獣。主人公の家にちょくちょく姿を現し、いつしか
家族の一員となっていた。無口で感情表現に乏しく、主人公にしか懐かない。

紺屋美奈(こうやみな)。(CV:佐々留美子)
交通事故に遭い、主人公の共神「癒慰」で助けられた女の子。
控えめで消極的な、大人しい女の子。テニスが大好きで、唯一テニスにのみ
情熱を燃やす。

刃菊(はぎく)。(CV:楠鈴音)
刀の物神。妖刀と言われ続け、人間嫌いになるが、主人公に諭され、主人公を
主と認める。それ以来、家族の一員となる。
忍び装束をまとった女性で、口調も考え方も固い。

鈴森静音(すずもりしずね)。(CV:桐島やよい)
主人公と静名の前に、突然現れた女の子。主人公をパパ、静名をママと呼ぶ。
明るく無邪気な女の子……に見せかけて、実は強かでちょっぴり腹黒い。
でも本当は素直ないい子。

絵の方はほのぼのとした雰囲気の漂う柔らかい絵柄で、とても魅力的だと
思います。どのキャラも活き活きとしていてステキです。
CGはコントラストの強いはっきりとした色遣いで、丁寧に処理されていると
思います。
立ち絵はポーズ変化・表情変化ともにあり。会話に応じてころころ切り替わり、
コミカルな表情もあって見ていて楽しいです。
また、立ち絵で動きが表現されており、ずいっと迫ってくるとか、びっくりして
逃げるとか、疑問に思い、それが解決した仕草なんかが立ち絵の切り換えに
より表現されていて、立ち絵だけでも作品を盛り上げてくれています。
なかなか凝った演出が成されていて、見事ですね。

キャラクターは個性豊かなキャラクター揃い。どのキャラクターも不思議な
力や重い過去、特殊な設定を持っていて、そんなキャラクター達が繰り広げる
ストーリーは、時に楽しく、時に切なく、メリハリがあってとても面白いです。
紗雪LOVE。もう、むっちゃくちゃ可愛らしいです。照れたときなんか、もう、
どうにでもしてって感じ。
そして、男性キャラですが、秋牙瀬タクマが最高に渋くて格好良くて、作品を
ピシッと引き締めてくれている感じです。まあ、某シナリオではオチに使われて
いましたけど(^^;

音声はキャラクターとのマッチングはほぼ良し。演技の方も特に問題なし。
ちょっとあやに関しては、独特の口癖「うじゅぅ」が浮いてるように聞こえる
ことがあったり、叫ぶシーンで今ひとつ迫力に欠けたりと、やや物足りなさは
ありましたが、それ以外は特に気になることはなし。
一部、2役を担当している声優さんがいますが、演じ分けはばっちりなされて
おり、違和感は全然なかったです。特に、静名と静音は結構会話するシーンも
あるんですが、同じ声優さんがやっているとは思えないぐらいです。ブラボー。
某シナリオではそんな状態がずっと続くので、もうオンステージ状態でした(笑)

音楽は静かな曲から激しい曲まで、シーンに合わせた曲が幅広く、数多く用意
されていて、作品を盛り上げてくれます。
曲単体で聴いても楽しめるぐらい、クオリティの高い曲が多いです。
ただ、途中で英語のセリフが入る曲があるのですが、これがずっと流れていると、
ちょっとセリフ部分が気になりました。確かに最初聴いたときは格好良く感じ
ましたけど、それがずっと続くと、さすがに気になります。

ゲームを起動すると、オープニングアニメーションが流れます。
歌は軽快なテンポの聴きやすい曲で、透き通るような歌声が心地良いです。
絵はキャラクター紹介・シーン紹介的なものですが、風景画が非常に綺麗で、
見応えがありました。

エンディングも歌あり。切なく静かな曲で、その中にも力強さを感じるような、
エンディングの雰囲気とばっちり合った歌で、なかなかいいですね。
システム
インタフェースはややキーボード操作可。メッセージ送りや選択肢決定はキー
ボードで行えますが、メニューの操作などはキーボードで行えないようです。
既読スキップ、強制スキップ、バックログ、オートモード搭載。
バックログはマウスのホイール機能に対応しています。
通常のメッセージ送りもキーボードで可能です。

描画はWindow・フルスクリーン両対応。画面サイズは800x600です。
動作はやや重め。描画で引っかかる感じです。
スキップ動作もやや重め。ただ、1度クリアすると、シナリオの分岐部分から
始めることが出来るようになっていますので、あんまりスキップは使わないかも。

セーブ箇所は64箇所+クイックセーブ3箇所+オートセーブ1箇所。セーブ/ロードは
随時可能です。
セーブデータはセーブ日時の他、シーンタイトルとシーン画像が保存されます。
数としては、選択肢の数がかなり少ないため、これだけあれば充分でしょう。
まず使い切ることはないと思います。クイックセーブやオートセーブはいらない
ぐらいだと思いますが、まああって困るものでもないですしね。

システムはオーソドックスな選択肢決定型のアドベンチャー。
選択肢でシナリオが分岐する、ツリー型の構造になっています。というか、
選択肢1つでシナリオが決まったりします。
また、条件を満たすと、新たなシナリオがプレイできるようになる、シナリオ
追加型のシステムにもなっています。

ディスクレス起動可。バックグラウンドでの動作も可能です。
主人公の名前は「古坂優夜(ふるさかゆうや)」固定です。
シナリオ・プレイ感
ゲームは、主人公が行方不明になった義妹の唯を捜す旅から帰ってくるところ
から始まります。結局唯は見つからず、消沈する主人公の前に、突然あやが
現れ、紗雪や刃菊も加わって、楽しく毎日を過ごしていきます。

前半は、明るく楽しくほのぼのとした日常が描かれます。
基本的に前作と同じ展開ですが、大幅に加筆修正されているようです。
……禍風って、そんなにヤバい代物だったのか……(^^;

後半は、切なく、もの悲しい展開で、でもどこか温かい、心に染みるような
展開。まあ、シナリオによっては怒濤のアクションシーンの連続だったりも
しますけど。
各ヒロインの抱えた問題や、この街に関わる問題に立ち向かっていったり、
ヒロインの傷を癒していくようなシナリオが続きます。

ラストは、問題を綺麗に解決して、そのままエンディングへ。
ただ、手放しでハッピーエンドというわけではなく、どこかもの悲しい雰囲気の
漂うシナリオもあります。それでも、温かく、じーんと胸に来る、とっても良い
シナリオだと思います。

特筆すべきは演出の巧みさ。立ち絵を利用した演出もそうですが、音楽も
シーンによく合っていたり、シナリオの持って行き方や設定の使いなども
含めて、あらゆる意味での演出がばっちりはまっており、とても感情移入が
しやすかったです。
シナリオ自体もとても力があり、泣けるシーンはホントに胸にじーんときて、
怒るシーンでは本当怒れるぐらい、感情移入しやすい、ぐいぐいと引っ張る
ようなシナリオでした。
さらに、どのキャラクターも活き活きしており、いろんな設定や過去を持ち
つつも前向きに進んでいく様は、かなり感動的でした。
あと、各ヒロインの個別ルートに入っても、他のキャラクターもストーリーに
しっかり絡んできて、とても自然にストーリーが展開しているのも素晴らしい
と思います。

逆に、ちょっと気になったのは、過去の回想という形で、何度も同じシーンを
見せられること。スキップも効かず、結構長い回想を見せられるので、ちょっと
辛かったです。

H度は並。ヒロインによって1〜3回と幅があります。今回新規に追加された
シナリオは、1人を除いて1回だけです。
描写はややあっさりめで、尺の方もそれほど長くはありません。一応2回戦が
用意されていたりもしますけど、それほどエロエロという感じではないです。
せっぱ詰まった状態でのHシーンや、何かから逃げるようなHシーンなど、
どこかもの悲しいHシーンも多く、どちらかというとストーリーの一部として
組み込まれたシーン、という感じですね。
なので、Hシーン単体で見ると、やや物足りなさは感じますが、全体として
みれば、うまく作品に組み込まれたHシーンだと思います。

テキストは誤字や脱字が多く、特に脱字がみょーに気になります。
「なんか、幸せなだろうけど」とか「あやに殴られたあご押さえながら」とか、
「静姉も大変だと思し」とか、非常にイージーなミスがかなり目に付きます。
また、音声も脱字のまま収録されているものがあって、かなり違和感が。
他にも、「夢源郷」が「夢限郷」となっていたり、こんなのが各所にちりばめ
られていますので、ちょっと気になりました。
さらに、ちょっと読点が少なめだったり、突然の視点変更もあったりと、やや
読みづらさを感じるテキストでした。
プレイ時間・難易度
ゲーム期間は不明。平然と1週間が経っていたり、特に日にちの経過を気に
する必要はないです。

ワンプレイは8〜10時間。エンディングの数も結構あるので、かなり長いです。
ただ、2周目以降は、シナリオが分岐するところから始められますので、半分
ぐらいには短縮できます。
ただ、メインのシナリオが2本ありますから、それは純粋にプレイする必要が
あるわけですが……。
前作ではワンプレイ4時間程度でしたが、今回はシナリオの大幅追加に加えて
音声も追加されていますので、プレイ時間は倍以上に膨れあがっています。
全体のボリュームで言えば、3倍以上になっていますけど。

難易度は低め。選択肢1つでエンディングが決まるような感じですので、
全ての選択肢をしらみつぶしに選ぶ形になります。とは言っても、選択肢は
数えるほどしかないため、労力はかからないでしょう。まあ、シナリオがかなり
長いので、読むのは大変かもですけど(^^;
総評
お奨め度ですが、ちょっと切ないハートフルストーリーが好きな人にお奨め。
「家族」「感情」「未来」をテーマとしたような、温かいストーリーが展開され、
ぐいぐいと引っ張り込むような力のあるシナリオで、感情移入もしやすく、
とても楽しめる作品だと思います。泣き所もいっぱい用意されていて、涙腺の
緩い人なら各シナリオ1回は泣けるのではないでしょうか。
ええ、私もだくだく泣きました。紗雪シナリオさいこー。もう、後半はずっと
泣きっぱなしだったような気がします……。

各ヒロイン毎に抱えている問題や展開が違っており、幅広いストーリーが用意
されていて幅広く楽しめますし、ちょっと切なくもの悲しいエンディングながらも、
どこか温かく、心に染み入るようなとてもいいお話でした。
一部、キツい描写があったりもしますけど、それも全然気にならないぐらい、
ゲームの世界に入り込めました。

唯一とも言える難点はテキスト周りでしょうか。やたら目に付く誤字・脱字や、
唐突な視点切り替え、何度も見せられる回想など、ちょっと読みづらく、感情
移入の阻害になってしまっている気がします。
せっかく力のある、凄いシナリオなんですから、テキスト周りのイージーな
問題で、ゲームの世界に浸りきれないのは本当に勿体ないです。
これさえなければ、手放しでお奨めできるぐらいの作品なんですが……。

でもまあ、それを差し引いても、どのシナリオも完成度が高く、感情移入して
プレイできましたし、泣けるし笑えるし、ハードなアクションからほのぼの
ハートフルな展開まで幅広く楽しめて、盛りだくさんで大満足の作品でした。

前作で唯一とも言える問題だったボリュームが大幅増量されて、音声も追加
されて、なおかつクオリティはそのままですから、もうほとんど文句なしです。
重ね重ねテキスト周りの問題だけが残念です。

前作をプレイしたことのない人は是非プレイして欲しいですし、前作をプレイ
した人でも大幅にシナリオが追加・加筆されていますから、充分に楽しめると
思います。是非プレイして欲しい作品です。
前作も同梱されていますので、比較してみるのも面白いかもですね。

お奨め度は、テキスト周りの問題に目を瞑って、ちょっと甘めの9です。
テキスト周りの問題が気になる人は、お奨め度から1点引いといて下さい。
まあ、誤字・脱字等は、修正ファイルで直るかと思いますし。

前作からちょうど3年。3年の時を経て、パワーアップして復活した、言わば
「心輝桜-真章-」と言える作品、是非プレイしてみてください。

最後に。プレイするまで「心輝桜」のリメイクだって気付きませんでした(^^;
いや、同じキャラがいっぱいいるなー、とは思ってましたけど……。


以下、ちょいと内容に触れるお話。まあ、見てもそーんなに問題ないかも?
ネタバレを極度に嫌う人は、見ない方がいいかな、ということで。


最初にプレイできるシナリオ(桜華編)をクリアすると、「闇使い編」がプレイ
出来るようになるわけですが……いきなり雰囲気がらっと変わってびっくり
しました。
ほのぼのハートフルな作品かと思ってたら、すんごいハードでキツい話の
連続で、ちょっと面食らったり。
でも、クライマックスの戦闘はめちゃめちゃ格好良くて痺れましたし、最後は
すっきり終わってくれたので良かったです。
クライマックスの戦闘のあと、まだ話が続いたのはびっくりしましたが(^^;
ちょっとご都合主義な展開が続きましたが、全然気になりませんでした。
ご都合主義万歳!(笑)
唯一の心残りは、闇使い編ではソルネと紗雪、特に紗雪の出番が少ないこと。
2大お気に入りキャラが両方ともあんまり出てこないのは寂しかったです……。
責任者出てこい!(笑)

で、今回も、結局唯はほったらかしですか?(^^;



心輝桜のレビューを読む  ロビーに戻る  レビュートップに戻る