WHITE CLARITY
ブランド名 ACTRESS ジャンル ロマンティックアドベンチャー
発売日 2005.07.22 定価 \8,800
パッケージ 紙製パッケージ(232x167x40mm) マニュアル A5ブックタイプ
DISC容量 2.31GB(DVD-ROM)
原画 庄名泉石 シナリオ 永里しの
音楽 18曲、PRIMARY STUDIO、藤岡央 あり(2曲、OP・挿入歌)、藤みさき
音声 主人公を除きフルボイス、伊藤硝子、はるかめぐみ、鈴田美夜子、菱勝、松濤エルサ、
黒岩圭介、草野花恋
インタフェース フルキーボードサポート 描画 Window・フルスクリーン両対応、
800x600
セーブ箇所 60箇所+クイックセーブ1箇所 CG枚数 295枚
おまけ イベントCG鑑賞、背景CG鑑賞、シーン回想鑑賞、音楽鑑賞
対象属性 館物、感動、純愛、ツインテール、お兄ちゃん、オーバーニーソックス、メイド服、帽子、
ストッキング、ガーターベルト、お姉ちゃん、ストレートロング、銀髪、ボブカット
1プレイ時間 5〜7時間 お奨め度 7

レビュー
概要
孤児院で暮らす主人公は、ある日院長に呼ばれ、地域の名士であるセモンの
屋敷で使用人として働くことになる。そこで、地下の部屋でひっそりと暮らして
いるアルビノの少女・リノと出会う。世間では、アルビノは悪魔の使いとして
忌み嫌われており、また、アルビノは太陽の下では生きられないという伝説が
あった。リノは、感情表現に乏しく、言葉も知らなかった。そんなリノの世話を
しながら、心を通わせていく主人公。しかし、リノは世間から忌み嫌われた存在。
果たして主人公とリノの運命は……という、ロマンティックアドベンチャーゲーム。
キャラクター・CG・音声・音楽
キャラクターは以下の通り。

ナナ。(CV:鈴田美夜子)
主人公と同じ孤児院で暮らしている女の子。明るく元気で負けず嫌い。
強気で我が儘だが、面倒見はいい。勘が鋭く、それに頼って行動した結果、
トラブルを巻き起こすこともしばしば。主人公のことを「お兄ちゃん」と呼び
慕う。ネズミが大の苦手。

シア。(CV:はるかめぐみ)
セモン家の使用人をしている女性。主人公と同じ孤児院出身で、主人公からは
「シア姉」と慕われている。おっとりほのぼのしたのんびり屋で世話好き。
お姉さんぶって振る舞おうとするが、ドジで失敗することも。

リノ。(CV:伊藤硝子)
屋敷の地下に住むアルビノの少女。感情に乏しく、言葉も知らないため、何を
考えているのか良くわからない、不思議な女の子。
主人公に最初に教えられた言葉「くっきー」で全ての会話を行う。

絵の方は可愛らしく、魅力的な絵柄。若干ばらつきはありますが、正面から
見たときの絵は、非常に整っていて、めちゃめちゃ綺麗です。
正面から見たときの笑顔は破壊的な可愛らしさでした(^^)
CGは丁寧に処理されており、雰囲気もあってとてもいいですね。
立ち絵はポーズ変化、表情変化ともにあり。会話に合わせて切り替わり、
アクションも大きいため感情移入もしやすいです。
特筆すべきは背景の綺麗さ。おまけで背景だけを鑑賞することも出来るの
ですが、それだけで充分楽しめるぐらいです。

キャラクターは明るく元気なナナ、おっとりのほほんなシア、無口だけど
甘えん坊なリノという配置。みんな個性豊かで、とても活き活きしています。

音声はキャラクターとのマッチングも良く、演技の方も問題なし。
リノは基本的に「くっきー」しか喋れないのですが、その一言で感情を上手く
表現されているのは素晴らしいです。

音楽はクラシック調の、広がりのある曲が多め。荘厳な雰囲気の、重厚な曲が
多く、雰囲気を醸し出しています。

ゲームを開始すると、プロローグと1章の後に、オープニングアニメーションが
流れます。
歌はゆったりとした、静かで独特の雰囲気を持った落ち着いた曲。
英語の歌詞が、さらに雰囲気を盛り上げてくれるような感じです。
絵の方は、シーン紹介……というより、イメージムービーといった感じですね。
こちらも落ち着いた雰囲気の綺麗な絵で、なかなかいい感じです。

途中、シナリオによっては挿入歌が入るのですが、こちらも幻想的な雰囲気の
しっとりとした歌で、シーンともよく合っていてとてもいいですね。
システム
インタフェースはフルキーボードサポート。
既読スキップ、強制スキップ、バックログ、オートモード搭載。
バックログはマウスのホイール機能に対応しており、音声の再生も可能です。
通常のメッセージ送りもキーボードで可能です。
次の選択肢や直前の選択肢に飛ぶ機能や、CGや音楽をログに合わせて表示
する機能、ログの途中から再開する機能など、なかなか凝った、便利なシステム
になっています。また、シナリオの「既読率」を表示することも出来ます。

描画はWindow・フルスクリーン両対応。画面サイズは800x600です。
動作は比較的軽快。スキップ動作はそこそこ高速です。

セーブ箇所は60箇所+クイックセーブ1箇所。セーブ/ロードは随時可能です。
セーブデータはセーブ日時の他、シーン画像と自由記述のコメントが保存され
ます。コメントは、初期値ではメッセージの一部が保存されます。
数としては、選択肢がそこそこ多く、分岐も結構ありますので、もう少しあっても
いいかなー、とは思いましたが、まあなんとかなるでしょうか。
クイックセーブを駆使すれば、なんとかなるかな? ぐらいです。
ただしクイックセーブは、ゲームを終了するとクリアされるので注意が必要です。

システムは選択肢決定型。選択肢1つでシナリオが分岐するツリー分岐型の
システムと、それまでの選択の結果で選択肢の内容が変わるというフラグ型
システムが合わさっているような感じです。さらに、条件を満たすと選択肢が
追加される、シナリオ追加型のシステムにもなっています。

ディスクレス起動可。バックグラウンドでの動作は不可です。
主人公の名前は可変です。初期値は「ユウ」で、初期値を使ったときのみ呼び
かけに音声が入ります。名前を変えたときは、呼びかけの前後が無音になり
ますが、不自然にはならないように工夫されています。
シナリオ・プレイ感
ゲームは主人公がセモンの屋敷で働くことになるところから始まります。
そこで、地下の部屋にひっそりと暮らすアルビノの少女・リノと出会い、リノの
世話をしつつ毎日を過ごす……という感じです。

前半は、感情に乏しく言葉も喋れないリノの世話をしながら、交流を深めて
いくという展開。時々ちょっとした事件が起こりつつも、ゆったりと毎日を
過ごしていきます。

後半は、大きな事件が起こり、みんなでそれに立ち向かい、乗り越えていく
という展開で、緊迫感溢れるシリアスな展開が多いです。

ラストは、手放しでハッピーエンドとは言えない、ちょっと切ないストーリーが
多いですが、胸に響くような終わり方ですね。

特筆すべきは演出。特に絵的な演出が凝っていて、独特の雰囲気を上手く作り
出しており、視覚的にも楽しめます。

逆に気になったのは、設定の強引さと展開の唐突さ。主人公は最初、パーティの
手伝いということで屋敷に呼ばれるのですが、ほとんど仕事してない気が(^^;
他にも気になる点はいっぱいあるのですが、ネタバレになるので最後に。

あと、どの選択をしても、結果は似たような感じになることが多いため、いま
ひとつ選択肢の意味を感じないこともしばしば。そのままBAD ENDになることは
ありますけど。

H度は並。各ヒロインとも複数回用意されています。ただし、1回のプレイで
見られるのは多くて2回ですが。尺はやや短めで、描写も比較的あっさり。
2回戦があることもありますが、それでもちょっと物足りない感じです。
内容は純愛系のらぶらぶHばかり。シチュエーションも似たり寄ったりで、
あまり幅は感じられませんでした。ちょっと切なさの漂う退廃的なシーンも
あったりして、Hさよりも、ストーリーの一部としてのシーンという感じです。

テキストはそれほど誤字は見あたらないのですが、盛り上がっているときに
来ることが結構あって、ちょっと醒めるかも。
ナナの名前が「ナ」と書かれていたり、「もうほとんど失われいる?」とか、
イージーなミスが多いのがなんとも。
それ以外では、特に気になることもなく、読みやすいテキストだと思います。
プレイ時間・難易度
ゲームは章立てて進みます。
ゲーム期間は不明。日付の表示はなく、イベントのある時だけをつまんで
プレイするような形式ですので、気にする必要はないでしょう。

ワンプレイは5〜7時間。まったりしたテンポで進むので、やや長く感じました。
共通部分は結構多いですが、個別シナリオもそこそこあるので、全体的には
やや長く感じました。

難易度はやや高め。シナリオ追加型のシステムのため、条件を満たさないと
見られないシナリオがあり、その条件と分岐場所が解りづらいため、かなり
戸惑うかと思います。まあ、ポイントに気付けば、比較的楽だとは思いますが。
ポイントはパーティの当日、リノの所に行くかどうか、ですね。ここで大きく
シナリオが分岐します。あとはしらみつぶしに行けば何とかなるでしょう。
ただ、エンディングを全て見てもCGは100%にならず、CGが100%になっても
既読率は100%にならなかったりしますので、既読率まで100%にしようとすると、
かなり大変です。どうでもいいような選択肢でも、両方を選択しないといけな
かったりしますし。
総評
お奨め度ですが、ちょっと切なく、でも感動的なストーリーが好きな人にお奨め。
ほとんどのエンディングが手放しでハッピーではなく、どこか切なさの漂う展開
ですが、心に響くストーリーで、最後には温かい気持ちになれる感じです。
とても雰囲気が良く、しっかり雰囲気が統一されていて、演出も凝っていて、
作品の世界に入り込みやすかったです。

ただ、選択肢の内容があまり行動に反映されなかったり、コンプリートする
のがかなり大変だったり、強引な設定が出てきたり、唐突な展開が目立ったり、
ちょっと残念な点も目に付きました。
もう少し、設定を全体にうまく馴染ませて、自然な展開で設定が活かされる
ように作ってもらえれば、もっと作品の世界に浸れるんじゃないかなー、と
思えるだけに残念です。

また、ストーリー性重視な作品だと思いますので、ここまで難易度を高くする
必要はあったのかなー、と思います。
もっと簡単にして、ストーリーを楽しめるようにした方がいいんじゃないかなー、
と思いました。

でも、リノと徐々に心を通わせていく展開は良かったですし、切ないながらも
心に響く力のあるシナリオは良かったですし、何より演出が凝っていて雰囲気が
良く出ていてとても楽しめました。
作品の雰囲気が気に入った人は是非どうぞ。

最後に。結局、リノって何者だったんですか?(^^;


さて、ここからは、エンディングに絡むようなネタバレ全開な感想です。
これからプレイするつもりの人は読まない方がいいでしょう。
でも、私が一番言いたいことはここだったりします(^^;

まず始めに。いきなり奇跡で終わりかよ!(^^;
やっとのことでトゥルーエンドのルートに乗って、わくわくしながらプレイ
していた時、まさかとは思いましたが、奇跡で解決するなんて……。
それまでの切ない展開、台無し(^^;

他にも、設定が唐突に湧いてくるところが多かったのはちょっと……。
リアって結局何しに出てきたんですか。
いきなりセモンが不治の病だとか言われても。
それに、魔法って何だよ。脈絡ねーぞ。
まあ、シアとセモンの関係は薄々そうかなーとか思ってましたけど。
ちゅーか、そもそもリノって何者なんですか? 朝になると消えたり、
呪いとかいって豹変したり、かと思えば歌い出したり……。
そして、一番わからないのはくっきー。あの奇跡って、くっきーが起こし
たのでしょうか。お前ら一体何者だ。お前らの血は何色だ!
……ふつーに青そうで嫌だ(^^;

そして、各ヒロインとも複数のエンドがあるわけですが、終わり方としては、
ノーマルエンド(?)の方が綺麗かも。一応全員平和的に解決してますし。
まあ、全員の設定が全シナリオ共通だと考えると、かなり切ないですが。
# 間違いなく、セモンは死んでますよね(^^;
##リノも暴走してるかも知れませんし。

さて、このゲームは言葉を喋れないリノがヒロインなわけですが、喋れない
ヒロインが出てくるゲームで、期待する展開は何でしょう。
そりゃあもう、最後に喋れるようになることですよね。それだけで、お涙
ちょうだいの感動ストーリー完成ですよ。
もちろん私も、それを楽しみにプレイしていました。……最後の最後まで、
「くっきー」としか喋りませんよこの娘(^^;
いや、リアに乗っ取られたときは、「フレッツスクウェアで君は少し喋りすぎ
だと思うのだが」と言わんばかりに喋りまくってますが、それは別として。
まあ、エピローグで、「大好き」と言ったかのような演出はありますけど、
これはいくらなんでも弱すぎですし。
せめて最後は、はっきり喋って欲しかったですねー。歌は歌うクセに。

リノ消滅エンドで、リノが消えるとき、最後に主人公の名前を一言呼んだり
したら、めっちゃくちゃ感動的だったんですけどねぇ。勿体ない。

消滅エンドも、トゥルーエンド、もそんな感じで肩すかしだったので、一番
泣いた……というか、唯一泣けたのがリノ死亡エンド(消滅でなく)でした。
これは、切ないけど、いいお話でした……。

全体的に、ストーリーの流れはとっても好みで良かっただけに、設定の
強引さと、展開の唐突さ、そして詰めの甘さが残念でなりません。
このあたりが綺麗に処理されていれば、お奨め度 9 もあり得たかと思える
ぐらいの作品だったのですが……。



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