ゆのはな
ブランド名 PULLTOP ジャンル 賽銭おねだりADV
発売日 2005.03.25 定価 \9,800
パッケージ 紙製パッケージ(188x264x42mm) マニュアル A5ブックタイプ
DISC容量 GAME DISC : 1.82GB(DVD-ROM)
ORIGINAL SOUND TRACK ゆのおと : CD-DA=622.9MB、CD-DA23トラック
DRAMA CD ゆのどら : CD-DA=339.0MB、CD-DA9トラック
原画 藤原々々
仁之丞
シナリオ 丸谷秀人、J・さいろー
音楽 23曲、ノーブランドサウンズ、
ツーファイブ、ジャンゴマン
あり(2曲、OP・ED)、原田ひとみ
音声 あり、七原ことみ、生田香織、一色ヒカル木葉楓
福島梨亜、楠鈴音、茶谷やすら、棟方一志、紫原遥、萌原ぷりん3せい
インタフェース フルキーボードサポート 描画 Window・フルスクリーン両対応、
800x600
セーブ箇所 56箇所+クイックセーブ1箇所+
オートセーブ3箇所
CG枚数 75枚
おまけ 音楽鑑賞、CG鑑賞、シーン回想
対象属性 ほのぼの、ギャグ、コメディ、ドタバタ、ハートフル、神様、着物、和服、お兄ちゃん、
触角、ボブカット、赤髪、人妻、未亡人、ストレートロング、眼鏡っ娘、ショートカット
1プレイ時間 12〜15時間 お奨め度 7

レビュー
概要
大学の冬休みにバイクでふらっと旅をしていた主人公は、ゆのはな町で事故を
起こし、道ばたにあった祠に突っ込んで壊してしまう。意識を失った主人公が
気がつくと、そこには1人の少女が浮いている。その少女はこの街の守り神で、
神力を使い主人公の傷を治したという。お礼を言おうとした主人公に、少女は
お礼の代わりに祠の修理費を払って欲しいと言い出す。かくして主人公は、
ゆのはな町でアルバイトをして、祠の修理費を稼ぐことになるのだった……
という、賽銭おねだりADV。
ただし、主人公がおねだりするわけでなく、おねだりされる側です。
キャラクター・CG・音声・音楽
キャラクターは以下の通り。

ゆのは(CV:七原ことみ)
ゆのはな町を守護する神様。事故を起こして瀕死の主人公を助け、その代わり
祠の修理費を要求する。守銭奴で、食欲魔神。
主人公の妹として、町に滞在する。

伊東わかば(いとうわかば)。(CV:生田香織)
行く当てのない主人公とゆのはに同情し、家に招待してくれた少女。
銭湯「華の湯」で暮らす。素直で純粋なおっとりのほほんマイペース天然娘。

高尾椿(たかおつばき)。(CV:一色ヒカル)
華の湯の向かいにある、高尾酒店の娘。気さくでさっぱりとした性格の姉ちゃん。
困っている人がいると放っておけない、世話焼きタイプ。言葉遣いはやや乱暴。

桂沢榛名(かつらざわはるな)。(CV:楠鈴音)
喫茶店・白摘茶房のマスター。ほんわかした柔らかい雰囲気の女性。
シュールな小話が得意。

桂沢穂波(かつらざわほなみ)。(CV:木葉楓)
榛名の娘。やや無口で言葉遣いも丁寧なため、クールで大人びた印象のある
女の子。しかし、好奇心旺盛で、行動力もある。霊感があり、オカルト大好き。

宇奈月由真(うなづきゆま)。(CV:福島梨亜)
わかばの友達で、わかばのことが大好きな女の子。むしろLOVE。わかばのことを
想うと、妄想の世界に旅立つ。わかばの家に居候している主人公のことをあまり
快く思っていない。
怪力を誇る、ゆのはな町の暴れ牛。ゆのはな町最強生物(笑)

絵の方は柔らかく、ほんわかしたタッチの可愛らしい絵柄。見ていて優しい
気分になれる、和める絵柄だと思います。
CGは丁寧に処理されており、柔らかい雰囲気を醸し出していますね。
立ち絵はポーズ変化、表情変化ともにあり。アクションは大きく解りやすく、
感情移入しやすいです。

キャラクターはサブキャラまで含めて個性豊かな面々揃い。そんな中、ゆのはは
飛び抜けた個性を放っています。主に、守銭奴の方向で(笑)
わかばLOVEな真由も、かなりいい味出してますけど。
男性キャラで言えば、渋蔵もいいですね。みんな活き活きしていると思います。

音声は、キャラクターとのマッチングはほぼ良し。ただ、ゆのははちょっと、他の
キャラに比べて浮いているかなー、という印象がありました。
元々、他のキャラに比べると飛び抜けてテンションの高いキャラで、その存在
自体が浮いている感もありますし。録音レベルもゆのはだけ飛び抜けて高い
(というか、しゃべり方からしてやかましい)ため、ちょっと他のキャラクターとの
バランスが悪いように感じました。
演技の方はほぼ問題なし。ゆのはは上記の問題もあってやや浮いた感はあり
ますけど、そーんなに気にはならないかと。ただ、Hシーンでは、やや物足り
なさも感じましたけど。
特徴としては、メッセージでは「……」とか「(略)」とか「(中略)」となっている
ところでも、きっちりセリフが入っていたり、延々とセリフが続いたりすること。
なので、メッセージを読み終わったからといって、油断していると、その後も
延々と喋り続けていたりします。なので、音声再生中にメッセージ送りは
し辛いですね。音声を飛ばしながらプレイしたり、OFFにしてプレイすると、
ちょっと面白みは減少するかもです。音声でも小技が効いている感じですね。

音楽は、ほのぼのとした柔らかい曲が多め。ついで、静かで切ない曲が多く
なっています。とてもクリアなサウンドで、聴き応えがあると思います。

ゲームを起動すると、オープニングアニメーションが流れます。
歌はゆったりとした優しい雰囲気の曲。聴いていて和める感じの曲なのですが、
ちょっとボーカルが弱くてバランスは悪めかも。
絵の方は、キャラクター紹介・シーン紹介的なもの。特筆すべき点はなし。

エンディングも歌あり。切なく優しい雰囲気の曲で、エンディングの雰囲気を
とても上手く表現していると思います。
システム
インタフェースはフルキーボードサポート。
既読スキップ、強制スキップ、バックログ、オートモード搭載。
バックログはマウスのホイール機能に対応しており、音声の再生も可能です。
通常のメッセージ送りもホイールで可能で、音声のリピート再生も可能です。

描画はWindow・フルスクリーン両対応。画面サイズは800x600です。
動作は比較的軽快。スキップ動作もそこそこ高速です。

セーブ箇所は56箇所+クイックセーブ1箇所+オートセーブ3箇所。セーブ/ロードは
随時可能です。
セーブデータはセーブ日時の他、シーン画像とゲーム内日付、メッセージが保存
されます。
数としては、それほど選択肢は多くなく、序盤からほぼオンリープレイで進める
必要があるため、これだけあれば充分かと思います。

システムはバイト先選択+選択肢決定型のアドベンチャー。
朝、どこでバイトするかを決定して、それ以降はイベント中に出てくる選択肢を
決定しながら進める……という感じです。選択肢はフラグ型になっているようで、
条件を満たせばエンディングへのシナリオがプレイできるという感じですね。

ディスクレス起動可。バックグラウンドでの動作は不可です。
主人公の名前は「草津拓也」固定です。
シナリオ・プレイ感
ゲームは主人公が事故を起こし、ゆのはに助けられるところから始まります。
助けた見返りとして、祠の修理費を要求され、ゆのはと霊的に繋がってしまった
ため、ゆのはな町から出ることも出来ず、仕方なくゆのはな町でアルバイトをして
修理費を捻出することになる……という感じ。

序盤は、個性豊かな住人達とのドタバタコメディ。
守銭奴で、平気で人を騙す神様のゆのはと、情にもろくやたらアツい主人公が
ゆのはな町で暮らすようになる過程が、おもしろおかしく描かれています。
ゆのは、お前ホントに神様か?(^^;

中盤は、修理費を稼ぐためにアルバイトをしつつ、そのバイト先にいる女性と
仲良くなっていくパート。主人公とその女の子との関係が丁寧に描かれ、徐々に
親密になっていく過程が楽しめます。

終盤は、各ヒロインの抱えた問題を絡めた、ちょっとシリアスで切ない展開。
ゆのはの正体なども絡めて、しっとりとしたストーリーが流れます。
とは言っても、主人公は基本的にアツいヤツですから、しんみりしっぱなし
というわけではなく、コミカルな展開も用意されていますけど。

特筆すべきは、心情描写の丁寧さ。各ヒロインの主人公に対する気持ちなどが
とても丁寧に描かれており、また、主人公がだんだんヒロインに惹かれていく
ところもきっちりと描かれていて、展開がとても自然で感情移入しやすいと
思います。

そして、キャラクターはみんな活き活きとしており、会話もとても楽しいので、
よりいっそう感情移入はしやすくなっていると思います。

さらに、個別ルートに入っても、対象となっているヒロイン以外のキャラクターが
しっかりストーリーに絡んでくるなど、とても厚みのあるストーリーが楽しめると
思います。

H度はやや高め。各ヒロインとも複数回用意されていますが、キャラによって
かなり回数に差があります。描写の方は比較的濃厚。ただし、こちらもキャラに
よってやや差があるように感じます。
尺の方はたっぷり取られており、2回戦に入ったりもしますので、充分満足は
出来るかと思います。ただし、中途半端で打ちきりになるシーンもありますが。

テキストはちらほら誤字は見受けられますが、それほど致命的なものはない
かと思います。コミカルでテンポも良い、読みやすいテキストだと思います。
# 寝顔だけは天使。行動は小悪魔。その実体は神様。……実体?(^^;
プレイ時間・難易度
ゲームは12月17日(土)から始まります。ゲーム期間は約1ヶ月。基本的に1日
ずつプレイしていきますが、最後の方はちょっと日付が飛んだりもします。

ワンプレイは12〜15時間。かなりテキスト量が多く、長い印象です。
さらに、共通部分が少なく、本編に入ってからはほとんど個別ルートという
状態ですので、スキップを使ってもあまり短縮できないでしょう。

難易度はやや低め。基本的に狙ったヒロインと会い続けていればOKです。
ただ、選択肢を1つ間違えただけでクリアできなくなったりしますので、注意は
必要かと思います。
総評
お奨め度ですが、ほのぼのまったりハートフルコメディが好きな人にお奨め。
田舎町ののどかな雰囲気や、優しくて親しみの持てるキャラクター達が織りなす
コミカルなドラマはとてもほのぼのしていて面白く、ゆったりとした雰囲気を醸し
出したハートフルストーリーが楽しめます。
まあ、田舎町の割にはやたら喫茶店が混雑していたり、毎日のように酒の配達が
入ったりしているのは微妙ですが(^^;

キャラクターはみんな個性的で活き活きしており会話も楽しいうえ、心情描写が
とても丁寧でしっかりしているため、より一層キャラクターの魅力が引き出されて
いると思います。

問題点は2点。まずは、全体的にややメリハリに欠け、特に中盤は同じことの
繰り返しとなるため、やや中だるみがあること。心情描写がとても丁寧なため、
シーン1つ1つが結構長く、それが結果的に間延びした印象を与えてしまって
いるようにも感じられます。そして、夜のイベントなどで、同じイベントでも昼間に
どのバイトをやったかによって微妙に内容が異なっており、スキップも効かない
ため、何度も似たようなイベントを見なくてはならず、余計に中だるみ感が強く
なっているように思えます。
さらに、スキップがほとんど効かないことからトータルのプレイ時間もかなり長く
なっているため、時間のない人には厳しいかと思います。
コンプリートまで、30時間ぐらいはかかりますからねぇ。

そして、もう1点はゆのはのキャラクター。守銭奴でわがままで嘘つきの神様と
いうキャラなわけですが、パッケージなどから受ける印象よりもはるかにキツく、
しかもそういったシーンがたびたび見受けられるため、人によってはかなり引く
かも知れません。町の人達がみんな素直でいい人のため、そういう人を平然と
騙すゆのはには、反感を抱く人もいるでしょう。もう少し、表現を軟らかくして、
丸いキャラクターに出来なかったのかなー、と思いました。
町の人達が丸くて柔らかい人がほとんどのため、一人だけやたら尖っている
ように思えてしまいます。

ただ、それらの点を差し引いても、ゆったりとした雰囲気で進むほのぼのとした
コメディドラマは面白いと思いますし、キャラクターもゆのはがちょっと人を選ぶ
感はあるもののみんな魅力的で、会話も楽しく充分楽しめると思います。
演出も凝っていますし、ストーリーの流れも自然で、感情移入はとてもしやすい
かと思います。

雰囲気が気に入って、ゆのはの傍若無人な態度に耐えられそうで、多少長くても
面白ければそれでいいという人は是非どうぞ。
……気のせいでしょうか。結構ハードル高く思えるのは……(^^;

最後に。「賽銭おねだりADV」というより、「賽銭強制ADV」の気が(^^;
# 「おねだり」というレベルじゃねぇ……。
##「お強請り」と書けばそれっぽいかも?(笑)


全キャラをクリアすると、タイトルメニューからゆのはシナリオが遊べるように
なるわけですが……ちょっと目眩しました。まだ続くのか、と(^^;
で、このゆのはシナリオが言ってしまえばメインとなるストーリーな訳ですが、
ちょっとパワーに欠ける気がします。
まとめとなるシナリオの訳ですから、もう少し力のあるシナリオを期待したい
ところですね。これが良ければ、もう1段階評価上げたんですけど。

あと、由真や榛名シナリオがないのは残念ですねー。どちらも非常にいいキャラ
クターだと思いますので、勿体ないですよー。



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