H2O-FOOTPRINTS IN THE SAD-
ブランド名 ジャンル AVG
発売日 2006.06.23 定価 \7,800
パッケージ 紙製パッケージ(167x230x40mm) マニュアル A5ブックタイプ
DISC容量 GAME DISC : 2.63GB(DVD-ROM)
原画 基4%月音
籠目、砌練炭、SCA-自
シナリオ 藤倉絢一、SCA-自、ゆず
音楽 28曲、elephant music、Pixelbee
Blasterhead(Silverbox)
あり(2曲、OP・ED)、monet
音声 あり、和泉真優、一色ヒカル成瀬未亜、矢沢泉、榊原ゆい
インタフェース メッセージ送りのみキーボード可 描画 Window・フルスクリーン両対応、
800x600
セーブ箇所 64箇所 CG枚数 126枚
おまけ GRAPHIC、SCENE、MUSIC
対象属性 学園物、感動、ギャグ、コメディ、銀髪、委員長、カチューシャ、お嬢様、黒髪、
ストレートロング、ストッキング、ツインテール、ボクっ娘、ボブカット、メイド服、
エプロンドレス、ガーターベルト、オーバーニーソックス
1プレイ時間 7〜9時間 お奨め度 6

レビュー
概要
生まれたときから原因不明の目の病気だった主人公は、ある時から完全に
視力を失い、それが原因でいじめられる日々を送っていた。ある日、父の
はからいで田舎の叔父の家で暮らすことになった主人公は、新しい学校で
いろんな人達と出会っていく。そんな中で主人公は、様々な大切なものを
手に入れていく。果たして主人公は、どんな未来を手にするのか……という
ノベルアドベンチャー。
キャラクター・CG・音声・音楽
キャラクターは以下の通り。

神楽ひなた(かぐらひなた)。(CV:一色ヒカル)
村長の孫娘。階段から落ちたところを主人公に助けられ、それ以降、主人公の
ことを命の恩人として親しく接してくる。おっとりマイペースな女の子。
活動速度が著しくゆっくり(笑)

小日向はやみ(こひなたはやみ)。(CV:和泉真優)
主人公の隣の席の女の子。家のことで村八分状態になっており、みんなから
ゴキブリと呼ばれいじめられている。腕っ節が強くすぐに手が出る一見強気な
女の子だが、実は寂しがり屋で臆病な優しい女の子。

音羽(おとは)。(CV:成瀬未亜)
時の音の精霊。主人公にしか見えない不思議な女の子。いつも明るく元気
いっぱいで、主人公につきまとってくる。主人公のことをとても大切に思って
おり、いつも見守っている。

田端ゆい(たばたゆい)。(CV:矢沢泉)
主人公のクラスメイト。はやみをいじめているグループのリーダー的存在。
高飛車でプライドも高く、人をバカにしたような話し方をする。

八雲はまじ(やくもはまじ)。(CV:榊原ゆい)
主人公のクラスメイト。人懐っこく親しみやすい雰囲気の女の子……もとい、
男の子(笑) でも、心は乙女。

絵の方はとても可愛らしく、繊細で綺麗な絵柄。原画家さんはいっぱい参加
しているのですが、絵柄にそれほど大きな差はなく違和感はありませんでした。
CGはとても綺麗に処理されており、とても見応えがあります。
立ち絵はポーズ変化・表情変化ともにあり。メッセージが全画面表示のため
あまりじっくり立ち絵を見ることもないのですが、さりげなく変化していて
コミカルな表情もあったり、見ていると楽しいです。

キャラクターは個性豊かな面々揃い。おっとりマイペースなひなた、クールで
乱暴なはやみ、元気いっぱいの音羽、いじわるなゆいと、いろんな方向性を
持ったキャラクターが揃っています。
そんな中、ひときわ輝いているのがはまじなわけですが(笑)

音声はキャラクターとのマッチングも良く、演技の方も問題なし。
音羽のひたすらハイテンションな演技は圧倒されます(^^;

音楽は綺麗な旋律のゆったりした曲が多め。作品の雰囲気をほのぼのと包んで
くれます。……内容は結構殺伐としていたりするんですけど(^^;

ゲームを開始すると、プロローグの後にオープニングアニメーションが流れます。
歌はゆったりとした爽やかな曲。広がりのある歌でなかなか聴き心地はいいです。
絵の方はシーン紹介……というか、イメージムービー的なもの。特筆すべき点は
特になし。

エンディングも歌あり。しっとり落ち着いた曲で、余韻を楽しめますね。
システム
インタフェースはメッセージ送りのみキーボード可。
既読スキップ、強制スキップ、ヒストリー、オートモード搭載。
バックログはマウスのホイール機能に対応しており、音声の再生も可能です。
通常のメッセージ送りもホイールで可能です。

描画はWindow・フルスクリーン両対応。画面サイズは800x600です。
動作は比較的軽快。スキップ動作はそこそこ高速です。
メッセージ全画面表示のノベルタイプになっています。

セーブ箇所は64箇所。セーブ/ロードは随時可能です。
セーブデータはセーブ日時の他、シーン画像とゲーム内日付が保存されます。
数としては、選択肢が極めて少ないため、これだけあれば充分すぎるでしょう。
てゆーか、こんなにいらない(^^; まあ、あって困るものでもないですが。

システムは選択肢決定型のアドベンチャー……というか、ほとんど選択肢は
なく、ひたすらシナリオを読み進めていくノベルですね。
システム的な特徴としては、主人公の目が見えないことを表現するための
Blindnessモード。これは、絵が白黒で表現されるというものですが……
絵自体はハッキリ見えていてただ色が鮮やかでないだけなので、あーんまり
意味がない気が。
あと、クリアするとアフターストーリーが見られるようになったり、新たな
シナリオをプレイできるようになる、シナリオ追加型のシステムになっています。

ディスクレス起動可。バックグラウンドでの動作も可能です。
主人公の名前は「弘瀬琢磨(ひろせたくま)」固定です。
シナリオ・プレイ感
ゲームは、主人公が田舎の学校に引っ越してくるところから始まります。
目の見えない主人公は、いろんな人に助けてもらい、関わりを持って、子供
時代を過ごしていき、その思い出を抱いて大人になっていく……という感じ。

まず最初の話ですが、小学生の頃の話だとはしばらく思いませんでした……。
というか、見た目高校生ぐらいに見えるんですがっ(^^;
演技も別にそーんなに子供子供した感じではないですし、やたら丁寧な言葉
遣いで話すキャラも多くて、ちょっと面食らいました。

内容的には、はやみがいじめられたり、主人公の目が見えないことでいろんな
問題に巻き込まれたりしていくもので、ちょっと重苦しく、鬱々とした雰囲気の
話が続きます。まあ、主人公はなんとか明るく振る舞おうとしているため、
そーんなに沈み込んだ雰囲気はありませんけど、どうしても根底に暗いものが
流れている感じで、プレイしていて切なく、気が重くなってきました……。

そして後半、成長した主人公が、ヒロインと再会するわけですが……なんか、
見た目あんまり変わってないんですけどっ(^^;
それなのに、ヒロインの顔をステキに忘れている主人公がらぶりーです。
……きっと、ずっと目が見えなくて、ほとんど顔を見たことがなかったので、
ちゃんと覚えてなかったんですよね。そういうことにしておきます。
そして、再会してからは子供時代の頃をひたすら回想しつつ、その頃の想いを
再認識して結ばれるという感じで、なんかあっけないです。

ラストはすっきり綺麗に終わりますが、お話としてはまだまだ始まったばかり
という終わり方のため、やや消化不良感が残るかも。

ただ、クリアした後にアフターストーリーがプレイできるようになり、そこで
その後が描かれたり、本編では語られなかったエピソードが語られたりします。
それを見て、やっとストーリーが終わるという感じですね。

まずプレイしていて気になったのは、主人公の目が見えないという設定。
これによって主人公は、誰かに頼らないと生きていけないということになって
いるわけですが……なんか、あんまりハンデを感じないんですけど(^^;
すっごく普通に行動してますし、挙げ句の果てには目が見えないのに、書いて
ある文字を機械的に読み上げたりしてますよ(^^;
Blindnessモードもどうにも中途半端ですし、今ひとつ感情移入することが
出来ませんでした。

そして、メッセージは全画面表示なわけですが、テキストの色分け等がなく、
誰が喋っていても同じように表示されます。
音声のあるキャラならそれで誰が喋っているのかわかりますが、音声のない
キャラクター同士が喋っていると、たまに誰が話しているのかわからなくなる
ことがありました。もう少し工夫が欲しいところです。
# 口調でなどで判別できるのが最善だとは思いますけど。

H度はやや低め。各ヒロインとも複数回用意されています。尺の方はそこそこ。
描写はややあっさりめです。
内容的にはごく普通の純愛系H……かと思いきや、結構変わったシーンも用意
されていたりして、バリエーションはなかなかです。
まあ、それでもやっぱり、どこか物足りなさはありますけど。

テキストはちらほら誤字は見受けられますが、そーんなに気にはならないかと。
ちょっと子供っぽく無駄にテンション高いテキストが多いので、人を選びそう
ではありますが。
プレイ時間・難易度
ゲーム期間は不明。子供時代が約1ヶ月で、大人になってからは数日、そこに
アフターストーリーという感じです。一応1日ずつプレイしていくタイプでは
ありますが、あまり気にする必要はないでしょう。

ワンプレイは本編だけなら6〜9時間。アフターストーリーまで含めれば、
最高で12時間ぐらいでしょうか。シナリオによって結構幅があります。

難易度は極めて低め。というか、ゲーム全体を通じて、選択肢は片手で数え
られる程度しかありません。まず悩むことはないでしょう。
総評
お奨め度ですが、ちょっと切なくノスタルジックな雰囲気のストーリーが
好きな人にお奨め。
ただ、雰囲気はゆったり穏やかなんですが、盲目やいじめなどをテーマに
しているため、内容は結構シリアスで重苦しいです。
なので、プレイしていてあまり気持ちのいいものではなく、苦手な人に
とってはかなり辛い内容だと思います。
まあ、その分、幸せになれたときの感動は大きいわけですけど、そこまで
耐えられるかどうか、ですね。

そして、このゲーム、選択肢による分岐がほとんどありません。
最初のシナリオは固定ですし、その後も選択肢1つでどちらのシナリオに
進むか決めるようなものばかりで、幅は極めて少ないです。
まあ、最初は普通に考えるとはやみに感情移入するとは思いますけど、
はやみのキャラクターが気に入らない人にはかなり辛いかと思います。
また、音羽は他の人には見えないという不思議要素満載のキャラで、そう
いう設定になじめない人も辛いでしょう。
面白いけど、楽しくはない、という印象ですね。

さらに、このゲームは主人公の目やはやみのいじめ、音羽の正体など、
様々な設定があるわけですが、その説明のタイミングがどうにもピントが
外れている感じで、いまいちストーリーにのめり込むことが出来ない
という印象がありました。ここであまり書くとネタバレになってしまうので
そのあたりは最後にひっそりと書いておきます。

はっきり言ってこのゲーム、プレイする人をめちゃめちゃ選ぶと思います。
雰囲気になじめて、最初の話は小学生時代の話だというのが受け入れ
られて、いじめの理由や音羽の正体など細かいことは気にしないで、目が
見えないことをあまり重視していなくて、なおかつややクセのある子供っぽい
主人公を受け入れられることが出来れば……って、ハードル高ぇ(^^;
小学生時代をほほえましい、可愛らしいと思うか、ウザいと思うかで、
はっきり好みが分かれると思います。

絵はめちゃめちゃ綺麗で魅力的ですし、お話自体はそこそこいいと思うん
ですけど、ちょっとその見せ方を間違っちゃったかなー、という感のある、
勿体ない作品に思えます。
子供っぽい、それ故に残酷ないじめや、無駄にハイテンションなお話に
ついて行けそうな人は是非どうぞ。

最後に。「この黒い部分に触るとハゲるかもしれません。ココに触るな!!」
……やべぇ、触っちまった……ハゲるのかな……(^^;
# パッケージを開けたところにこんなことが書いてあります(笑)


以下、ちょいとネタバレを含む突っ込み。

上にも書きましたが、この作品は何故主人公の目が見えないのか、また
どうして突然見えるようになったのか、はやみはなぜいじめられているのか、
ひなたはどうしてはやみを裏切ったのか、ゆいはどうしてはやみをいじめて
いるのか、そもそもゆいは何しに出てきたのか(特にひなたシナリオ)、音羽は
何者なのか、何故はまじは女の子じゃないのか、はまじエンドはないのかなど、
様々な謎が含まれています。
しかし、それが語られるタイミングがことごとく外れてるんですよね。

最初は問答無用ではやみシナリオになり、ひなたに裏切られ、いじめられる
ようになったことがメインとなるわけですが、このシナリオでは何故はやみが
いじめられているのか、どうしてはやみが裏切ったのかが、きっちり説明され
ません。そのため、ずっともやもやしたまま話が進むような感じで、どうにも
感情移入できないんですよね。
というか、これをちゃんと説明してくれないと、どう見てもひなたは嫌な感じの
キャラになっちゃうんですけど(^^;
# いい子にこだわっている割には、端から見るとどう見ても悪い子……。

さらに、主人公の目が見えないことや、音羽の正体については、全ての
シナリオを読んだ後に見られるアフターストーリー……というか、
アナザーストーリーで語られます。ちなみにこのアナザーストーリー、
基本的に単なるおバカストーリーです。こんなおまけシナリオの中で、
そんな大事な設定語られても(^^;
まあ、本編中で薄々わかっていたことではありますけど、もうちょっと
ネタばらしするタイミングを考えた方がいいんじゃないですかねぇ。
せめて音羽シナリオの中で説明しよーよ、という感じです。

あとは、主人公の目が見えるようになるシーン、あっけなさすぎ。
ご都合主義全開のタイミングで、もはや苦笑ですよ。
それに、見えるようになっても、あーんまり変わりませんしね(^^;

このゲーム、素材はすんごくいいと思うんですけど、ちょっとテーマとして重い
ものを選びすぎたのと、その負の面を強く描きすぎたのと、あとは演出が
ちぐはぐで欲しいときに欲しい情報が手に入らないことで、著しく感情移入の
阻害になっちゃっている気がします。
そのあたりが全て上手くかみ合えば、いい作品になったんじゃないかなー、
と思えるだけに残念です。
というか、ゲームの大半は小学生時代の話というのがそもそもアレ(^^;

盲目ゲームとしては、2000年3月にLiLiMさんから発売された「光を…」と
大差ない出来のような気がします。あれも目が見えるようになるシーンは
突っ込みどころ満載だった気がしますけど(^^;

ところで、音羽は時の音の精霊ということですが……どう見ても幽霊です
よね?(笑) ←禁句



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